「……あの……これ」

鼻息荒く妄想の世界に突入した良子に前の席の男子が回ってきたプリントを恐る恐る差し出す。

「あッ!……どもども」

(どれどれ、そんなラッキーな胸キュン姫はどんな子かな?)

意識して口元を引き締め、後ろにプリントを回した良子は──

固まった。


(……う、そ?)

見たことがあるなんて程度ではない。

しっかりと覚えている。

この顔を見たのは……

つい最近。

玉置の携帯で。

「……何か?」

首を傾げる黒髪の可愛らしい人。

(……リエちゃんじゃん)

「い、いえッ!!」

ブンッと音がしそうな勢いで良子は身体をまた反転させた。