「これッ!!次は、この問題集で──」

炎のごとく燃える良子が問題集の山を引っ掻き回す横で玉置が『鬼だ、鬼がいる……』と呟く。

(誰が鬼なんじゃ!)

自分でもよく分からないが、とにかく今年は留年しない程度にはしてあげないと!という妙な使命感が良子を奮い立たせていた。

「玉置君ッ!!二年生二回目なんだから、勉強ちゃんと出来なきゃダメだってばッ!恥ずかしいでしょ!?留年、留年だよ!?」

珍しく熱くなる良子。

「……いや、別に。……ってかそこまでいきなり?なんか勘違いしてねぇか?ヨッちゃん、あの──」

「何?何か文句ある!?なんで恥ずかしくないの?って言うかどうしてそこまでバカになっちゃったの?ヤンキーでバカなんてッ──」

(あッ!)

『最低じゃん?』と言う言葉は辛うじて飲み込んだ。