「何?入んなよ?」

玉置の怪訝な声で我に返った良子は右手を顔の前に持ってきて『すまん』のポーズで、玉置の押えているドアを『どもども』と言いながら通過した。

「ブッ。……どこぞのオヤジだよ」

玉置がすかさず突っこむ。

良子にしてみればそんなにおかしな事をした覚えはないが、玉置は確かに笑っていて。

(こんなトコも違うのかぁ……)

良子はまた発見をした。


そして店内でコバヤシを追いかけていたテレさんに挨拶をすると、

「バカムスコ、ゴメンネー。メーワクカケテ。セイバーイ、シトイタヨー!ミセノナカノ、ソージ、マドフキ、サセタヨー」

と、昨日の状況をどこまで理解してるのか分からない返事がカウンターから返ってくる。

後ろで玉置が小さな声で呟いた。

「……コバヤシのくせによぅ」