その時

「君ッ!ちょっとこれを放しなさい!」

と良子の手からパイプ椅子が乱暴に奪い取られた。

「それから君……もう大丈夫だからね!」

騒ぎを聞いて駆けつけた監視員のおじさんは確かに玉置にこう言った。

(……へ?まさ……か)

耳を疑う良子の胸を嫌な感覚が駆け抜ける。

「……大の男が女の子にやられるなんて──。君、しっかりしなさいよ!」

おじさんは、良子と玉置の間に自らの体をズイッと割って入らせる。

どうやらこのおじさん、良子が玉置を殴ったと思い込んでいるようだ。

「ち……違うって!!違うってばぁ!!おじさんサイテー!」

慌ててそう叫ぶ良子は、そのおじさんに『部屋で話を聞きましょう』と腕を引っ張られ。