「そ、そっかぁ……。そうだよなぁ」

取って付けた様な良子の嘘を素直に受け取る玉置。

「そうなんだよ。だから──」

(断るけど、暴れたりしないでね?)

良子は玉置の機嫌を損ねないように様子を伺う。

「じゃ、空いてる時でいいから、勉強教えてくれ」

「えっ?……えぇ?」

(そうきたか!だいぶ予想外だよッ!って言うか……またぁ?)

良子の脳裏を悪夢の様な小学校五年の放課後がかすめた。

「な?空いてる時間ならいいだろ?」

(空いてる時間……にィィィ?んんー!?はぁ?)

それでも良子は必死で『空いてる時間』に断る理由を探し続ける。

いまだかつてこんな難題に出会った事はなかった。