良子は完璧に思い出した。

目の前にいる赤頭は玉置鉄平(タマキテッペイ)である。

良子はやっと正解にたどり着き、少しだけ胸のモヤモヤが晴れた気がした。

小学校五年の時、テストの度に良子にカンニングをさせろと脅し、それでもさせなかったら放課後に勉強を教えろと脅迫した玉置鉄平。

(人に『ヨッちゃんも変わった』とか残念そうに言ってるけど、お前こそ変わるべきですからぁ!!)

良子は心の中ですかさず玉置に突っ込む。

「え……?お前……まさか今俺を思い出したのか?」

「まっさかぁ~」

(言えるわけないじゃ~ん。恐いもーん)

ひきつった良子の笑顔に玉置の眉間からシワがスッと消えていく。

「ヨッちゃん、実は頼みがあるんだ」