(しかし……なんでこんな猿芝居しなきゃなんないんだよぅ!)

ギシギシと固いビニールを軋ませて良子はサマーベッドに腰掛けた。

ブーン、ブブーッと下品な音が玉置方面から響いてくる。

斜め前のサマーベッドで、玉置がビーちゃんの差し出したティッシュで鼻をかんでいるのだ。

その音が良子を小さく刺激した。

(絶対泣いてんだっつーの!小学生並みの意地張ってるんじゃないよ!)

悔しいけれどやっぱり『あ゙?』の玉置が恐かったし、また『泣いてない』と絡まれるのはごめんなので、

なるべく斜め前は見ないようにプールサイドに視線を走らせながら良子は心の中だけで突っ込みまくった。

そんな隠れ反逆中の良子に

「あー、俺風邪だ。風邪のひき始めかもしれないなッ!鼻水が出るもんなッ!」

と芝居染みた玉置の声が襲いかかる。

(あああああ……)

本当にうるさい。

意地っ張り過ぎだ。

良子は頭を抱えたくなった。