(今は『なきむしさん』なの?へぇ……)

少なくとも良子が小学生の時は『なかせむしさん』だったはずで。

良子は目を擦る玉置を妙な生き物を見るような目で見た。

そのとたんその未知なる玉置は

「お、俺は泣いてねぇ!!」

ズビッと鼻をすすった。

(……な……なぬ?泣いてるだろ?)

そのズビッて鼻水すする音が何よりの証拠だ。

もうびっくりを通り越して放心してしまいそうになる。

「ぜってぇ、泣いてねぇしッ!泣くわけねぇしッ」

「…………」

(誰だ?この小学生はッ!)

そんな突っ込みは言葉に出来ず、虚しく脳内を通過する。

「ヨッちゃん!俺、泣いてねぇだろ!?な?」

「うぇい!?」

良子の答えに不満な玉置の眉間に見事なシワが誕生し……

「あ゙!?」

と、その眉間にふさわしい声が響いた。

「ひ、ひィィ!!……な、泣いてましぇん!」

「だろ?よしッ」

(……とりあえず、命は助かったか)

映像と音声の相乗効果か、良子はのび太となり簡単にジャイアンに屈した。