そんな良子に更に予想外な言葉が降りかかる。

「ありがとな。サンキューな……」

(『サンキューな』って……。玉置君、爽やかじゃないだけに似合わないよぉ)

吹き出しそうになった良子の視界に飛び込んで来たのは──

メガネの縁から人差し指を入れて、目尻を軽く擦る玉置だった。

(えッ?な、泣いて……る?泣いてるよぉぉ!)

良子は目を疑った。

しかも何度瞬きをしても、目を右手で擦っても……

やっぱり玉置はそのままで。

(ちょっとぉぉぉ!!勘違いで……泣いちゃったぁぁ!!)

ヤンキーで超不良でジャイアンで。

そんな風に見てきた玉置の泣き顔に、

あまりの光景に良子はジリジリと後ずさり、ふくらはぎがゴンッとサマーベッドに当たった。

その時ビーちゃんが

「おにいちゃんはなきむしさんなの」

とニッと笑った。