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突如襲ってきた衝撃は一瞬で、気がつくとつい先ほどまで目の前に居たうららの姿はそこになく、気が遠くなるほど広い地下室にアオはひとりでいた。
静まり返ったその空間に自分以外の人の気配は全くない。
「……まいったな」
呟く声さえ頼りなく黒い闇に溶けて消える。
とりあえず当ても無く歩くより、来た道を引き返そう。
そう思いゆっくりと慎重に歩き出す。
風も無いのにランプの明かりがぼんやりと揺れた気がして、思わず目を逸らした。
ふと先ほどまでの温もりが消えた手を見つめる。
彼女は、どうなったのだろう。
ソラの為に泣いていたその姿が頭を過った。
せめて彼女だけでも外に出られると良いのだが。
薬を、彼の元へ。
『一度足を踏み入れたら、本当に欲しいものを手に入れるまで、戻って来れない』
そう言っていたブリキのきこり。
うららの欲しいものは手に入ったはずだ。
でも、もしもまだ、彼女もこの暗闇に閉じ込められているとしたら。
きっとまた、泣いているのだろうと思った。ひとりで――
「……くそっ」
思わず漏れた言葉と共にメガネのフレームを押し上げ、歩き出す。
こんな所にまともな出入口などありはしない。
きっと、今探すべきは――
ひとりの方がよっぽど気楽だと、そう思っていたのに。
いきなりわけの分からない世界に飛ばされて、始終誰かと共に行動していた所為か。
ひとりの静寂に、嫌な記憶まで暗闇に紛れて忍び寄った。