「これが…?」

「…はい。きっと…」


封とタグに書かれた文字は読めなかったけれど、きっとこれが、ソラを助けてくれる薬。
根拠は無いけれど、不思議と確信はあった。

無事見つけられたことへの、ソラを助けられることへの安堵で思わず涙が滲む。

そして小瓶へと手を伸ばしたその瞬間、突然地下室が大きく上下に揺れ、うららは咄嗟に小瓶を掴んだのと同時に、アオの手を離してしまった。


「……っ、アオせんぱ…!」


衝撃に思わず瞑っていた目を慌てて開けると、先ほどまですぐ隣りにいたアオの姿が見当たらない。


「アオ先輩…?」


あたりを見回してもあるのは連なる棚とそこに並ぶ雑多な備品、それから頼りない蝋燭の明かりだけ。
自分の声がその隙間を虚しく通り抜けていく。


「アオ先輩…!!」


先ほどまで繋いでいた手が、冷たくなっていくのを感じた。


――また、ひとり。おばあちゃんはもういない。


泣いたってどうにもならないことはわかっていた。
だけど。


「…どうしよう…はやく戻らないと、ソラが…っ どうしよう…おばあちゃん…!」


涙が溢れて視界が歪む。
握った小瓶が小刻みに揺れる。

つい先ほどまでアオがこの手を繋いでくれていた。
ひとりじゃなかったから、ここまで来れた。


「アオ先輩…!」


アオはきっと、ひとりでも平気なんだろう。
自分なんかと違って、こんなことで怖気たり泣いたりしない。
自分の助けなんか、きっと必要ない。


「……っう…」


――でも。


――この世界にきて、わたしは。わたしにもできるとを、したいって思った。わたしも誰かの役に立てるなら…助けに、なるなら。


「…行かなくちゃ…」


ぐ、と。振るえる足に力を込める。
足の裏の感触が、漸く戻ってくる。


「帰らなくちゃ…ちゃんと、さがしものを見つけて…アオ先輩と一緒に、帰らなくちゃ…!」


ごしごしと力強く制服の袖で涙を拭う。
少し痛くて、だけどかえってそれが、これが現実なんだと教えてくれた。

目を凝らして耳を澄ませる。
探し物は、そこに在るから。

ずっと拒んできた不平の先に。