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『──嫌なのかい…?』


泣きじゃくる幼いうららを、祖母のヘレンが困った顔をして見つめていた。

ヘレンを困らせたいわけじゃなかった。
だけど胸を占める哀しみは溢れて出て。
あの頃のうららには、止められなかった。


『…だって…他のこには、みえないって…わからないって。みんな、わたしのこと、へんだって…!』

『うらら…物事にはすべて、意味があるんだよ』


『そんなのしらない…っ わたしはみんなと、いっしょがいい…!』


祖母譲りの色素の薄いクセの目立つ髪と青いその瞳が、余計にうららを〝普通〟から遠ざけていた。

いつも周りに馴染めなかった。
いつもひとりだった。
ひとりぼっちはさみしかった。

人と違うということは、受け容れられないということは、ひとりだという哀しみは。
まだ子供だったうららには耐え難い痛みだったのだ。

そして容姿だけでなくうららは、普通の人とは違うものを持っていた。


──今ならわかる。おばあちゃんが本当に魔女だったというのなら…わたしがその血を、色濃く継いでいるというのなら──。これは、この力は、紛れもなくおばあちゃんから受け継いだもの。


幼い頃からうららには、不思議に思っていたことがある。

うららには探し物や探し人がどこに居るのか、なぜかピタリと確信を持って当てることができた。
〝みえる〟、〝わかる〟…それは他人には理解してもらえないけれど、うららの中で確かに在る事実。

時折他人には見えないものを見て、それ故に迷子になることも多かった。
未熟なうららはそれを扱いきることができなかったのだ。

現実とは別の世界に迷い込んだうららを迎えに来てくれたのは、いつもヘレンだった。

だけどそんな自分がこわくてイヤで──いつも泣いていた。
見えてしまうナニかに、見えないナニかに怯えながら。

そんなうららに見兼ねたヘレンが、気休めになればとレンズの厚いメガネをくれたのだ。

それからは不思議とそれらの事象は息を潜め、仮初の平穏を手に入れた。

それでもうららが誰かとかかわり合えることは、無かったのだけれど。