悩んでいる時間も迷っている余裕も無い。
「…薬は、地下室にあるらしい。探してくるからお前達は彼についていてくれ」
「おれも行く。探しものなら、人数多い方がいいでしょ」
珍しく積極的なリオにアオは「ダメだ」と短く言い放つ。
リオが不快そうに眉根を寄せた。
アオは逸らさず続ける。
「地下室には魔法がかかっているらしい。多人数で行っても厄介だし足手まといだ。俺と…彼女で行く」
言ってアオが視線を向けた先のうららは、もう泣いてはいなかった。
未だ揺れるその瞳に、それでもまっすぐソラの姿を映して。
震えるソラの傍らにそっと歩み寄り、その手に何かを握らせ両手で強く包んだ。
祈るような、胸に刻む決意のようなその光景。
それから立ち上がりリオに「ソラをお願いします」と頭を下げ、今度は振り返ることなく小屋の外へと足を向けた。
閉じた扉の向こうでリオが小さく「気をつけて」と漏らしたのが、やけに耳についた気がした。