「そんな夢みたいなこと、あってたまるかよ」


真っ先に目につくのは、日の光に輝く金色の髪。
そしてその隙間から覗く鋭い目。
その雰囲気だけで、気圧されそうなほどだった。


――一体、誰──


「だけどどうやら全員、状況は同じようだな」


その後ろからは、溜め息と共にメガネを押し上げながら黒髪の少年が現れる。
ひどく不機嫌そうにうららとソラを見やり、すぐに視線を外してまた溜め息を吐いた。


「状況、というのは…」

「ここにいる、経緯ってこと」


見知らぬ存在の突然の介入に戸惑いながらもソラが零した言葉に、最後に現れた少年が盛大にあくびをしながら気だるげに答えた。

クセのある栗色の髪が、ふわふわと歩く度に揺れている。
ゆるりとした足取りでうらら達の目の前を通り過ぎたと思ったら、すぐに近くの木の幹に腰を下ろした。


「俺たちもある絵本に触れた瞬間、光に呑み込まれて…気がついたらここにいた」


うららとソラを見下ろしながら、メガネをかけた少年が心底不本意そうに言い再びを溜め息を漏らす。


「その、絵本て…」


思わず口にしたのはうららで、3人がそれぞれ視線の端で目配せする。
それからメガネの少年がその視線をうららに向け口を開いた瞬間、別の声がそれを遮った。


「『オズの魔法使い』」


響いた言葉は、その場にいた誰のものでもなく。
一斉に、声の方へと視線を向けた。