『嬉しいなぁ、聞いてくれるのかい? ボクの話を。ずっと話す相手もいなくて、退屈だったんだ。
あれはもう、ずっと前…どれくらい前だったかも忘れてしまったけれど、昔の話さ。突然雨に降られて身体がさび付いてしまってから、ボクはずっとこうして動けずにいた。助けてもらおうにも、この森を通る人は誰もいなくて…昨日森の向こうに明かりが灯っているのが運よく見えて、ずっと声を上げていたから今じゃ声までガラガラさ』

「……成程」


『アオ、ボクに油をさしてくれないかい? 小屋の中に油のカンがあるはずなんだ。そうしたら動けるようになる』

「……」


『アオが探しているものも、ソコにあるよ』


なんでもないように言われたその言葉に、アオはわずかに目を丸くし顔を上げる。

沈黙と視線に応えたのは青銅色のきこりの冷たい空洞。
錆びた瞳の奥の闇。


「…君も魔法が、使えるのか?」

『ふふ、まさか。聞かなかったかい? ボクらがこうして言葉を交わせるのは、目に見えない繋がりがあるから。だからボクには分かる。
アオ、君にボクの声が届くように、ボクにも君の声が聞こえるんだ。そして君とボクの願いごとは繋がっている。
ボクはずっとここから動けずにいた。君もそこからずっと、動けないんだね』