それきりレオは黙ってしまったので、うららも何も言わなかった。
反応を求めているようにも思えず、本当にただなんとなく、それを落としたようにみえたから。
小屋への帰り道をふたり並んで歩く。
明かりの灯った小屋は、暗い森の中で安心感をもたらしてくれた。
「わぁ、ごはんのいい匂い…アオ先輩が作ってくれてるんですかね」
「…またわざわざなんか作ってんのかよ…別に非常食でいいじゃねぇか…呑気なやつらばっかだな」
「で、でも、美味しいもの食べると元気出ますし…それに、ほら、おなか空いてると怒りっぽくなりますし…っ」
「…なんだよそれ、オレに言ってんのかよもしかして」
「え…えっ!? いえそんなつもりは…!」
「はは、まぁハズレてはねぇな。さっさとメシ食ってさっさと寝て、明日ははやく起きろよな。こんな森とっとと出よーぜ」
ぶっきらぼうに言いながらまたあの大きな手で頭をくしゃりと撫でられる。
――これって、妹扱いというやつなのかな。もしかして。
びっくりしたけど、でも不思議な感覚で嫌じゃなかった。
――お兄ちゃんがいたら、あんなカンジなのかな。顔も言動もはこわいけど、レオ先輩はやさしい人だ。ちゃんと話を聞いてくれるひと。
ひとりっこのうららは、そんな空想に思わず笑みを零してしまう。
──あぁでも。わたしには、ソラが居たんだ。幼なじみで、いつもわたしの傍にいてくれた、ソラ。
この前思い出した記憶の中、うららと両親が暮らした家の記憶の中でぽっかり大きな穴があるように違和感を感じた。
名前が切り取られた、あの存在。
――きっとあれは、ソラだったんだ。まだわたしがちゃんとソラのことを思い出せないから、姿が見えなかったんだ。