◇ ◆ ◇


「レオ先輩……っ!」


アオとの口論の後外に出て行ってしまったレオの後をうららは追いかける。

外は、森はもう真っ暗だ。
月と星がなんて遠い。
夜の森がこんなに暗いなんてうららは知らなかった。

不安に胸を締め付けられながらも、暗闇に溶けてしまいそうなその背中を必死に追った。


「──ついて来んな。目障りだ」


ぴしゃりと容赦なく言われた言葉に一瞬足を止め、だけど躊躇しながらもその後ろに続くうららに、レオが苛立ちを滲ませながらがしがしと頭をかく。


「…っ、なんだよめんどくせーな…ひとりにしろよ…!」

「でも…っ、何がいるか、分からないですし…」


うららに聞こえた得体の知れないあの声は、今はもう聞こえないけれど…なにかがいることだけは、確かだった。


「……もしかして、なんか見えてんのか? リオの時みたいに」


レオがようやく足を止め、振り向きながらうららの表情を伺うように覗き込む。
怪訝そうな瞳を向けられ僅かにたじろぎながら、うららは慌てて首を左右に振った。


「姿は、見えないです…だけど、声が…」

「声…?」


「声が、聞こえるんです…」


あの声がうららにしか聞こえないのなら、何かがあって気付けるのは自分だけだと思った。


――わたしが、レオ先輩を守ってあげなくちゃ。せめて何か、しなければ。わたしにできることを。


そんな思いに駆られるがまま、追いかけてきたのだ。