森は思った以上に薄暗く、頭上を覆い茂る木々に日の光はほとんど届かない。
獣や鳥の声すらしない、不気味なほどの静けさだった。


「うすきみわるーい」


緊張感のない声で欠伸をしながらリオが呟き、その声は思った以上に大きく森に響き渡った。
その時。


『……か…』


──まただ。
また、あの声。

低く掠れた不気味な声。気のせいではなく、今度は確かに。
あたりを見回すものの、その声の正体は見当たらない。

レオもリオも全くの無反応で歩き続けている。
どうやらその声は、アオ以外には聞こえてないようだった。

ただひとりを除いて。


「──うらら?」

「ソラ、声が…いま、何か聞こえなかった…?」


「声?」

「うん…低くて不気味な、声…なんだか、こわい」


「…僕には…聞こえないけど…」
 

先頭にいたうららが体を小さくしながら、隣りにいたソラの腕にしがみつく。
ソラの方は不思議そうな顔で彼女を見つめているその様子から、きっと嘘などついていない。

アオは目の前のやりとりを見つめながら、昨日リオが言っていた言葉を思い返した。


『最初かかしは、おれにしか見えなくて。理由はわかんないけど、うーちゃにおれが触ったら、うーちゃんも見えるようになったんだよ』