胸のずっとずっと奥が、熱を放つようにあつくなるのを感じる。
そしてうららは、その手が知るその名前を口にしていた。
「……そ、ら…」
不思議な感覚だった。
記憶を辿ってもその姿は思い出せないのに、それは自然とうららの内から、口から零れた名前。
湧き出た感情。
「……ソラ」
もう一度確かめるように呟いたうららに、目の前の綺麗な顔が本当に嬉しそうに、安心したように微笑んだ。
「そうだよ、うらら。僕たちは、幼馴染み。ずっと、一緒に育った」
「おさななじみ…」
そう言われても、やはり未だはっきりとはしない。
頭に靄がかかったように思考の邪魔をする。
戸惑いを隠せないうららに、ソラは続ける。
「今の状況がなんなのかは、僕もよくわからないんだ。…ただ、僕らはさっきまで学校の図書室にいた。そしてうららが絵本を開いた瞬間、光が溢れて…僕は慌てて、うららの手を掴んだんだ。そして気づいたら、ここにいた」
握ったうららの手を離さずに、ソラはなるべくゆっくりと言葉を紡ぐ。
うららにその瞬間の記憶はなかったけれど、とにかくここが図書室でも学校でもないことだけは、確かだった。