『うらら』


――声が、聞こえる。わたしを呼ぶ声が──


『おかえり、うらら』


胸がくるしい。
この声は──大切な家族の声。


――ママ、パパ…


「どこ……?」


見つからない。
声はするのに…決して間違うはずのない、大切な人の声が聞こえるのに。

遠ざかる。
その優しい笑顔も声も、ぜんぶ。

聞こえない。
もう、二度と。
触れることは、叶わない。


「────うらら…!」



だってもういない。
ここにはいない。


ママとパパは嵐の夜に、二度とこの家には帰って来なかった。