「──できた」

〝脳みそ〟だと言われればなんとなく分かるような、少しいびつなカタチの布と光る石でできた〝脳みそ〟。

たぶん日常では作ろうなんて、考えないだろう。
そう思ったら少し可笑しかった。

それに材料が無かったとはいえ、我ながらちょっと不恰好。
だけど不思議と、今までで一番の達成感がリオの胸にあった。


「リオ先輩すごい、目測だけで作れちゃうんですね、キラキラしててすごく、綺麗」


ずっと隣りで見ていたうららが瞳を輝かせて言うもんだから、リオはなんとなく誇らしげな気持ちと照れ臭さで、わらった。

それからその〝脳みそ〟を手に立ち上がり、かかしを見上げる。


「これ、あげるよ。ちょっといびつだけど、〝脳みそ〟だよ。きみに似合うと思って作ったんだ、これも所詮、カタチだけだけどね。
そこからも下ろしてあげる。自由になって、自分の足で立って、カタチだけの脳を手に入れて…自分で確かめてみるといい。
それでもやっぱり本物の〝脳みそ〟が欲しかったら、おれ達といっしょに来ればいいよ。オズの魔法使いに頼んでみれば? オズはなんだって願いを叶えてくれるんだって」

『……リオ…』


「おれの脳も、カタチだけだよ。だけどカタチなんて、あるか無いかなんて…たぶんそんなに、重要じゃないと思うよ」


大事なのはきっと、脳みそよりカタチよりも、ずっと深い部分。
カタチじゃないなにか。そんな気がするから。


「きみはきみの、できることを…やりたいことをすればいいんだ。そこに縛られている必要なんて、無いんだ」


――おれは。自分にできることなんて、殆ど無いと思ってた。自分でやりたいことなんて、選べることなんて。この道の先には、そんなの無いと思ってたんだ。

そう自分で、決めつけてたんだ。