──願いが、似ている?
かかしの言葉に胸がざわつくのをリオは感じた。
「──おれは…願いごとなんて、ないよ」
『……』
「……きみの、願いごとは…?」
なぜだろう無意識にそう、訊いていた。
繋いだ右手の先にいるうららはただ黙って見守っている。
きっと彼女も、受け止めきれていない何かを抱えながら。
かかしはどこか寂しげに、だけどしっかりした口調で、話しだした。
『ボクはね、脳みそが欲しいんだ。頭も身体もすべてわらが詰まっている。だけどわら以外はなにもない。空っぽだ。
おなかも空かないし、眠る必要もない。疲れることもないから、とても便利だったけど、ずっとこうして見守るばかりだった。それがボクの仕事だったんだけど、やはり退屈だったんだ。
だけどある日知恵のあるカラスに、ボクがただこうして見ているだけの存在であることが、知れてしまった。カラスは容赦なくとうもろこしを食べたし、カラスだけでなくそれを見たいろんな鳥まで、まったくボクをこわがらず、ボクをバカにしながらとうもろこしを食べ荒らした。ボクはまったくの役立たずになってしまった。
…そしてカラスが言ったんだ。〝君も脳みそがあれば、こんなにバカにされることも、そこに縛られることも無いのに。この世で一番価値のあるものは、脳みそだよ〟って。ボクには考える脳みそが無いから気づかなかったけれど、ボクに一番必要なのは、きっと脳みそだったんだ。自分で何かを考えて、そして答えを見つけ出せる。そんな素敵な脳みそが、ぼくは欲しいんだ』
――夢物語だ。
いくら童話の世界だとはいえ。
乾いた笑いも出やしない。