風が強く、吹いていた。

風に乗って薫るのは、遠い昔に嗅ぎ慣れたような草花の匂い、土の香り。
懐かしさに胸が締め付けられるのに、今はすべてがどこか遠く。

それよりもうららには今自分のこの現状が分からないという不安が胸を占めていた。

濃い霧がかかったように、頭が上手く働かない。
ただ疑問が口をつく。


「ここは……どこ…?」


震える視線の先に広がっているは、緑の地平線。
自分はさっきまで学校に居たはずだ。