『──やぁ。とうもろこしの味は、どうだった?』
相変わらず布に描かれたその口から声は聞こえるけれど、表情は全く変わらない。
最初ほど驚きはしないけれど、やっぱり少し不可思議で不気味だ。
そんなかかしを見上げながら、リオはのんびりと答える。
「なかなか美味しかったよ、すごく甘かったし」
『だろう?自慢の味さ』
「あのさ、聞きたいことが、あるんだけど」
全く表情の無い相手と話すのってなんとなく調子を合わせずらい。
うららはリオの影で相変わらず隠れるように、様子を伺っている。
『なんだい? ボクが知っていることなら、答えよう』
「なんでおれとうーちゃんにしか、きみは見えないの?」
口をついて出た一番の疑問はそれだった。リオ自身が一番、訊きたかったこと。
――うーちゃんはトクベツだとしても、じゃあ、おれは?
その関係性が、未だつかめない。
『──この世界で一番強く結ばれるのは、〝願い〟。そして君とボクの願いは、どうやらどこか似ていて、繋がっているみたいだ。だから君にはボクが、見える。
…そしてうららは、この世界ととても強い繋がりを持っている。それは必然的に、住人であるボクたちとも同じことだ。
だけどうららは記憶を失くし、その意識も気持ちも繋がりも薄れてしまった。だからきっと、見える君の存在が仲介になってくれたんだろう』