「あのかかしと、話したいんだって?」
「はい…あの、なにか…、知ってそうだったので…」
「いいよ、一緒に行こう」
言いながら笑って、右手を差し出す。
うらら最初意味を捉えきれずキョトンとしていたけれど、やがてわずかに顔を赤くして勢いよく首を振った。
その様子に、リオは少し拗ねてみせて。
「ソラくんとはふつーに繋いでいたじゃんー」
「だってソラは…っ、その、他の人とはちがうから…」
しどろもどろになりながら顔を赤くして俯くうらら手を、半ば強引にとる。
夜の風に少し冷えた、小さな手だった。
「ちがうことなんか、ひとつもないよ」
勢いよく引っぱったリオは無邪気な子どものようだった。
それからうららが、あきらめたように、仕方なさそうに笑う。
無理強いに違いは無いけれど、うららは振りほどこうとはしなかったから。
リオはその小さな手を引いて、とうもろこしの香りの中夜の道を柵に沿って進んだ。
壊れた家から歩いてすぐの所にあるとうもろこし畑を背に、かかしは変わらずリオ達を見下ろしていた。