ふと視線を、あの家に向ける。
壊れかけた家の窓やドアの隙間から、ランプの光が漏れていた。
中からは、仲が悪いようでどこか馴染んだようにもとれる、先輩たちの声が聞こえてくる。
「そのまんま茹でりゃいいだろーが!一番楽だろ!!」
「ヤだ、おれコーンスープがいい。ぜったい」
「じゃあ自分で作れ。但しライターの残量をよく考えて使えよ」
「つーかテメェも手伝えよ!」
賑やかに飛んでくる会話に、うららは思わずソラと顔を見合わせる。
なんだか気が抜けて、ふと吐き出すように笑ったら、気持ちが少し軽くなった気がした。
そんなうららに、ソラも安心したように息を吐き出す。
「うらら、きっといま持っているものが少ないから、不安で心許ないだけだよ。かかしは〝ドロシーの家〟って言ってたんでしょ? 確かドロシーは『オズの魔法使い』の主人公の名前だし…僕には見えないけど、かかしが登場したってことは、多分だけど物語を辿ってるんじゃないかな。
きっと、なにかを知ってるんだよ。うららの記憶に関することか、それとも先輩たちの願いごとと関係あるのかも」