「……まじで?」
ちょっと明るく言ってみたけど、目の前のソラは一層苦い笑いを浮かべる。
――うーちゃんに引き続き、またそのパターンですか。──あ。
「うーちゃーん」
――そうだもしかしてうーちゃんなら、見えるかも。
そんな淡い期待を込めて、少し離れた畑の中でとうもろこしを一生懸命収穫していたうららを手招く。
「どうしたんですか…?」
とうもろこしを両手に抱えたうららは、リオとは少し距離をとりソラの影に隠れながらおずおずと口を開いた。
その様子が警戒心の強い猫みたいで、ちょっとかわいかった。
「これ、見える?」
言ってリオが指差した先にうららも視線を向けるけれど、やはり無反応。
キョロキョロと目だけを彷徨わせ、それから視線をリオに戻して首を傾げる。
やっぱりリオにしか、見えていないようだ。
「ごめんごめん、気にしないで」
リオはひらひらと手を振りながら笑って言う。
それならそれで別になんの問題もない気がした。
家を教えてもらっただけメリットはあったのだ。
「家があるんだって。屋根の下で休めるみたい」
「ホントですか…? よかったぁ…」
頷きながらうららの腕の中に詰め込まれていたとうもろこしを、数本引き抜く。ずいぶんたくさん収穫したねと笑うリオに、わずかに顔を赤くしながらありがとうございます、とうららは俯いて。
ふと手が触れた瞬間、ピリッ、と電流が走ったような錯覚に、思わずお互い見つめ合う。
静電気? なんてぼんやり思っていた時だった。
『──うらら』
とうもろこし畑とリオ達をを見下ろしていたかかしが、しゃがれた声でうららの名前を呼んだ。