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目の前に広がるとうもろこし畑の中、みんなどこか顔を綻ばせながら十分に実ったそれをもぎ取っている。
リオはそれを遠くに見つめ、畑の周りに植え込まれた柵に腰掛けながら欠伸をひとつ零した。
赤く落ちていく夕暮れ。
奇妙な旅の1日目が、ゆっくり暮れていく。
稀に見る疲労感に知らず溜め息が落ちた。
こんなに歩くなんて自分にしては珍しい。
体力を使うことは、苦手だったから。
「あとは寝る場所かぁ」
『それなら、ドロシーの家を使うといい』
ぼんやりと呟いた独り言だった。
だってここには自分ひとりのはずだったから。
ここまで一緒に来たメンバーは、みんな畑の中で今日やっと見つけた食料確保に忙しそうだ。
今ここには、自分しかいないはず。
──なのに。
『この畑をぐるりと回った反対側に、ドロシーの家がある。半分潰れてしまっているけどね。家の裏には小川も流れているよ』
さっきと同じ調子でかけられる声の方角に、リオはゆっくりと視線を向けた。