そのぼんやり開かれた瞳には、自分しか映っていない。
うららは自分の顔が…容姿が嫌いだった。
思わずそこから視線を外し、俯く。

名前を呼ぶ人なんていなかった。
あだ名で呼ばれたことなんて滅多にないから、驚いた。

動揺する自分にそう言い聞かせながら、うららは質問に答えようと口を開く。


「い、1年です。ソラも…」

「あぁ、じゃあ新入生に王子様みたいな美少年がいるって、彼のことかな」


「…おうじさま…」

「クラスの女子たちが騒いでたよ。確かにイケメンだね」


「……そう、なんですか…」


――そっか、ソラは確かに整った顔してると思ってたけど、美少年なんだ。


でもそういうと、みんな綺麗な顔立ちだとは思うけど…でもだからと言って仲良くできるかできないかは別次元の話だ。
うららはこっそり溜息をつく。


「うるさい金髪のは学校で一番のふりょーだし、いじわるーいメガネは学校で一番頭がいい。生徒会長なんだよ」


淡々と説明され、うららは如何に自分が学校での生活に関心を注いでいないかが分かった。
生徒会長といえば生徒の代表だ。
顔ぐらいは知っておくべきな気がした。

うららが入学してまだ2ヶ月ちょっとのはずだけれど、忘れてしまったというよりは、単純に知らないのだろう。
全くピンとこなかった。
〝有名〟と言っていた理由をやっと理解した。

だけど生徒会長の顔を知らなくても、未だにクラスメイトの殆どと会話すらしてなくても…うららにとって生きていくのに、なんら支障はなかったのだ。