この世界にきて目覚めたとき。
ソラのことを思い出せなくてもその手に触れたとき。

その温もりだけは決して間違えることなく、〝ソラ〟、あなたに辿りついた。
あなたを忘れたり、できなかった。


「──さぁ、行って、うらら。おばあさんに教わった、おまじないを。帰り道が、拓くから。振り返らないで。君の未来が、待っているから」


言われるままにうららは泣きながら、導かれるように靴のかかとを3回鳴らした。
その瞬間に足元から金色の光が溢れ出し、真実の鏡へと繋がる。

真実の鏡が継いで光を放ち、帰り道を拓く風が吹き荒れた。

物語が、世界が…閉じようとしている。


「ソラ…!」


――ここを出たら…本当にもう二度と、ソラに会えない。


繋いだ手が、離れていく。


「僕も自分の在るべき場所へ帰らなくちゃいけない」


どこまでも優しく、微笑みかけてくれるソラ。

涙が溢れる。
あの日願ったこと。

この手を、離したくない。
離れたくない。


――だって、誓ったのに。ずっと一緒だと、約束したのに。そう、もう二度と───



「──うーちゃん…!」


霞みがかった思考に響く声が…うららの名前を呼ぶ声が、聞こえた。


「…リオ先輩…」

ひかれるように視線を向けた先には、顔を歪ませ今にも泣き出しそうなリオが居た。
それにアオと、レオもいる。

ここまで一緒に旅をした。
ひとりでは、なかった。


「帰るんだろう」

「…一緒に…!」


──…そうだ…帰らなくちゃ。現実に。

たとえそこがひとりぼっちでも。
変わると決めた。
生きると決めた。


この未来を、歩んでゆくと。