遠くでオズが呟いた声がしっかりとこちらまで届き、同時にうららの身体から光が溢れた。

それはやがてひとりの女の子の姿へとかわり、うららと向き合う。
うららと同じように赤毛の髪を三つ編みに編んだ、小さな女の子だった。


『はじめまして、うらら。わたしは、ドロシー。この物語を〝開く〟存在。…やっと出会えた、もうひとりのわたし』

「もうひとりの、わたし…?」


『あなたがちゃんと、あなたの道を選んだから。わたしもやっと、わたしの居場所に戻れるわ』

「……わたしを…この世界へ呼んだのは、あなたなのね…?」


うららの問いにドロシーと名乗った女の子は、にこりと微笑んで駆け出した。
オズや北の魔女、住人達の待つ場所へ。


『さよなら、うらら。あなたの新しい願いごとが、どうか叶いますように。わたし達みんな、心から祈ってるわ』


そう言って振り返りながら手を振り、彼女はまっすぐ在るべき場所へとかえってゆく。


そして最後の〝さよなら〟と、うららは向き合った。