この世界で〝ソラ〟は、たくさん、嘘をついていた。
だけど全部、うららを守る為に。
嘘を重ねてまで、傍に居てくれた。
「わたしが生きることで…パパもママも、おばあちゃんも…ソラも。生きた、証になる。軌跡になる。わたしはそれを、決して手離しちゃいけない。だってわたしは、ひとりで生きてきたんじゃないんだもの。
……そうでしょう…?」
呟いたうららの頬に、西の魔女の手が触れた。
姿形は変わらないのに、それはさっきまでの西の魔女ではなく別の人であることが、うららにははっきりと分かった。
「それがおまえの、選んだ道なのね…?」
「……うん…」
「現実に戻っても、待っているのはやはり孤独かもしれない…。明かりの見えない、明日かもしれない。それでもおまえは戻りたいと。帰りたいと、心から言えるの?」
溢れる涙を何度も拭った。
笑って答えなければいけないことを、頭ではきちんとわかっていた。
だけど涙は止まらなかった。
だからせめて、精一杯笑った。
「戻りたい…帰りたい…! だってわたしは、ひとりじゃないから……!」
うららの答えに西の魔女は、優しく微笑んだ。
それは見間違えるのこのない、大好きなおばあちゃんの笑顔と重なって見えた。
そして光が世界を包み込んだ。