「そうだよ、うらら。君は未来を、生きるんだ」
突然聞こえたその声に、うららも西の魔女もひかれるように視線を向ける。
「うららはまだ、死んでなんていない。生きてる。魔女の言葉に、惑わされないで…君が生きる場所は、ここじゃない」
視線の先の優しい声音を、きっとうららは聞き違うことはないと思った。
外壁の淵に、光を纏って立っていたのは──
「──ソラ…!」
名前を呼ぶだけで涙が溢れた。
光が、熱が灯るように、胸が熱くて。
――来てくれた。こんなわたしをまだ、守ってくれようとしてくれている。
いろんな感情が混ざり合って、その意味を留めない涙が溢れた。
嬉しいはずなのにこの胸は、痛くてこわくて張り裂けそうだった。
「──どうして、ここに…」
ゆらりと西の魔女が立ち上がり、おぼつかない足取りでソラに近づく。
その声音にうららがびくりと顔を上げると、ソラと目が合った。
「ソラ…!」
「うららはそこに居て」
「…でも…っ」
うららに背を向けた西の魔女の表情は、もう見えない。
だけどその後姿は異様な黒い空気を纏っていた。
今の西の魔女は、何をするかわからない。
そんな空気を全身から放っていた。