――…知っていた。わたし、思い出していた…
あの時思い出した、遠い空の記憶を…その意味を。
だってこれが、ソラがわたしについていた、優しい嘘。
思い出していたのに、どこかでずっと、感じていたのに…
確かめたくなくて、ずっと目を逸らしていた。
わからないフリをしていた。
…逃げていた。
かなしくて、つらくて、くるしくて…弱虫で卑怯なわたしは、あの日自ら死を選んでしまった。
わたしがこの世界にくる前に居た場所は図書室なんかじゃない。
ソラはきっとわたしにソレを思い出させたくなくて、嘘をついた。
あの日わたしは屋上の…フェンスの向こうに居た。
青い空を見上げていた。
飛び降りるその瞬間、屋上のドアが開いて、必死な顔したソラがわたしに手を伸ばして──
わたしにその手が届いたのか、そこから先はもう思い出せない。
憶えていない。
わたしがもうここに存在して居ないのなら、届かなかったのかもしれない。
だけどそれが、わたしの最後の記憶。
すべてを知っていたソラがわたしについていた、優しい嘘。
今までずっとただ黙って、わたしを見守ってくれていた、ソラは──