――わたし、は…居ない…


その瞬間。
頭の中で何かが弾けた。

それはひび割れるように、もしくは破裂するように。
音を立てて崩れていく。

〝真実〟と共に、溢れていく。


「覚えているでしょう、あの空を…あなたがすべてを投げ出して、焦がれた空を。……思い出したでしょう…?」


西の魔女の声を背に、うららはそっと鏡に手を伸ばした。
驚くほど近くにあったその鏡は、触れるのに決して、うららの姿を映さない。

真実しか、映さない。


「……わたし、は、もう…いないの…?」

「ええだって。自ら望んだんじゃない、うらら。あなたが自分で、選んだんじゃない…〝空の向こうへ行きたい〟と…〝あの日の空へ、かえりたい〟と。あなたがそう強く願って、あの銀の靴を履き、絵本を抱きしめて…

そして飛び降りたんじゃない、学校の屋上から……!」





――涙が、落ちた。