うまく思考が働かず、うららは西の魔女に導かれるままに体勢を変えながら、上半身をひねって後ろをふり向いた。
そこには西の魔女の身長よりも大きな半透明の〝円〟があった。
地面からわずかに距離を置いて浮いているかのように、長い楕円の鏡と思われるものが支えもなくただそこに在る。
うららの後ろにいる西の魔女の姿が映っていて、ようやくこれが鏡なのだと理解した。
鏡の中には指を指したまま愉しそうに笑う西の魔女の姿と、その背景は青い空。
――どうしてだろう、青い空を見ると胸が痛くなる。
そんなことを考えていたら、ソレを認識するのに時間がかかった。
その違和感はあまりにも不自然で、その事実はなかなかうららの頭に到達しない。
西の魔女が鏡の中でわらっている。
そこにうららの姿は映っていなかった。