何が起こったのか分からず、レオはただ呆然と突然隣りに現れた男を見つめる。
目元には黒い仮面をつけ全身は黒いスーツのような格好。
更に黒いマントを身につけた明らかに場違いな男。
その口元には、うっすらと緩い笑みを浮かべている。
――いったい、ダレ…
「急がなければ…時間がありませんよ」
またもや突然後ろから聞こえてきたその声は、凛と響く女の声。
驚いてレオ達が視線を向けると、そこには見覚えのある姿があった。
黄色の鮮やかなドレスは、やはり場違いには違いないけれど。
「…北の、魔女…?」
零した言葉に応えるように、北の魔女はにこりと微笑んだ。
「意外と凝った結界だなぁ…うららと魔女の居場所は分かるかい?」
「きっと塔の屋上でしょう。真実の鏡がありますから」
「では、急ごうか」
仮面の男と北の魔女の会話にまったくついて行けないレオたちを置いて、男は再び右手を頭上に翳した。
「さて、君たちの道は我々が造ろう。君たちは上へ…うららのもとへ」
「待てよ、あんたは一体…」
思わず突っ込んだレオの問いに、答えたのはすぐ近くまで来ていたソラだった。
まっすぐ見つめるその顔は、今にも泣きだしそうに歪められていて。
いつも笑みを絶やさないソラのそんな顔を見るのは、初めてだった。
「……オズ」
レオもリオもアオさえも。
思わず目を丸くし〝オズ〟と呼ばれた男とソラを交互に見つめる。
男は視線を塔に向けたまま、振り返ることなく答えた。