「で、ここからどうすんだ? てかあいつはこの塔のどこに居んだ…?」
砂と湖の不自然な境界に立ち空へと伸びる塔を見上げながら言ったレオに、返ってきたのは切迫したソラの声だった。
「レオ先輩、下がって!!」
ソラの叫んだ声と同時に、条件反射のように体をひく。
瞬後、つい先ほどまでレオが居た場所に鈍い衝撃音と砂塵が舞う。
──何かが落ちてきたのだ、レオ目がけて。
舞う砂埃にレオは顔をしかめ、薄く開けた視界に映ったのは。
「…サル…?」
大きさは、通常のサルよりも一回り以上大きく、背中には目を引く一対の翼。
――そうだこいつ、あの時うららを攫ったサルだ…!
「う、わぁ~~ずいぶんお仲間がいっぱいいるんだねぇ」
相変わらず呑気なリオの声につられるように視線を上げると、頭上には同じく翼を持ったサルたちが空中で群れを成してこちらを見下ろしていた。
「…マジかよ」
レオの零した呟きにまるで応えるかのように、その群れは翼を震わせまっすぐ進路をこちらに向ける。
そのスピードを徐々に加速させながら。
「くっそ…!」
獣や魔女よりはマシかもしれないけれど、とにかく数が半端じゃない。
固く握りしめた拳に呼応するように、胸が大きく脈打つ。
経験のあるそれは、レオの中にいる存在を熱く主張した。
その力を借りる為のもの。
この魔法の世界での、力を。
しかしその瞬間、身構えたレオの視界に突如現れた腕に、レオの意識が奪われた。
頭上へと翳された右手がパチン!と軽快に鳴り、と同時に一瞬の光が弾ける。
思わず瞑った視界の向こうで、襲い掛かってきていたサルたちが呻きながら湖へと落下していく音が聞こえた。
ムリヤリこじ開けて見上げた頭上には、空を覆い尽くすほどいたサルたちの姿は一匹もなかった。