そっと、隣りのソラの横顔を盗み見る。
目元に影を帯びるほど、長い睫に白い肌。
改めてみると、ソラは確かに綺麗だと思った。
ふとリオが以前言っていた言葉を思い出した。
――〝あぁ、じゃあ新入生に王子様みたいな美少年がいるって、彼のことかな〟
「…ね、ソラ、わたし達学校で、同じクラスなんだよね?」
「どうしたの、急に」
「前にリオ先輩から、ソラの噂のこと聞いたのを思い出して。王子様みたい、って噂されてるんだって」
「…僕が…?」
「目が覚めてからずっと一緒にいて、記憶もちゃんと思い出せないのに…そんなわたしを、ソラはずっと守ってくれたでしょう? おとぎの世界なら、王子様はつきものかな、って。だとしたらきっとそれは、ソラね」
うららの言葉にソラの目が丸くなり、それがなんだかかわいくてうららは思わず口元が緩んだ。
この世界にきてから、気の休める場所はなかった。
どこに居ても何をしていても、不安に駆られて。
実際の道のりは予想よりずっと険しかった。
だけど進むには食べ物も休息も必要だったし、うららひとりではきっとここまで来ることなんて無理だった。
図らずも出逢った先輩たちの、過去や心や傷跡に触れ。
手を取り合ってここまできた。
危険もあった。
哀しいことも、つらいことも。
だけどひとりじゃなかった。
だからここまで、辿り付けた。
――旅の終着点。
ここは今までで一番安心できる場所だった。