「───承知しました。では皆様のお部屋にご案内致します。
明日、ドロシー様より順に使いの者が部屋に呼びに参りますので、どうぞそれまで、おくつろぎ下さいませ」


久々にその名前で呼ばれたうらら戸惑いつつも、その言葉に従うほかなかった。


「──さて、ボクの役目はここまでですね。あとは彼女に任せましょう」


そう言って丁寧におじぎをし扉へと向かう門番に、うららは慌てて声をかける。


「待って、このメガネの鍵はどうすればいいの?」

「そうですね、一応宮殿の者に預けていきます。ですがそれは魔法のメガネですので、都と玉座の間以外はしている必要はありませんので消しておきましょう。
もしくはオズならカンタンに外せます。必要なとき、応じて現れますのでご安心を」


門番の言葉に呼応するように、視界を覆っていたメガネが音もなく消え景色が色を変える。
うららとアオは、きちんと自分のメガネを着けた状態になっていた。
魔法とは便利だなと改めて関心してしまう。

相変わらず部屋は緑の色で溢れていたけれど、そこまで不快感を感じなくなっていた。


「ありがとう、ここまで案内してくれて」

「いいえ、オズに会えるあなた達は大変幸運だ。あなた達に、人が溢れる、幸福に賑わうエメラルド都を見せてあげれなくて残念でした。

旅のお客人方、ひとつだけ。オズの姿はひとつではないと聞いたことがあります。その目に映る真実がひとつではないことを、忘れぬよう。

あなた達の願いが叶いますよう…よりよきオズの栄光が皆様にも与えられんことを、心より祈っています」


外見は子供なのにその仕草も声音もまるで大人そのものだった。
彼はこの世界を、この都とオズを心から信じ、愛しているのだと十分伝わってきた。

うらら達ひとりひとりに優しく微笑みかけ、小さな門番は自分の在るべき場所へとかえって行った。