「そんな…!」


その淡々とした物言いに、うららが思わず声を上げたその時――

どこからともなく一匹の青い蝶がひらりと部屋の中に舞い込んだ。
すべて緑のこの部屋で、その青い蝶はひどく印象的だ。

緑の背景に青い軌跡を残しながらいたずらに飛び回り、やがて門番の指先にふわりととまる。
それから門番が、視線をうららに向けた。


「…ふむ。きみはどうやら、オズと縁(ゆかり)ある者のようだね」

「…わたしが…?」


「きみのその額、マンチキンで北の魔女の祝福を受けたね?」


言われてうららは思わず額に手をやる。

マンチキン…北の魔女───祝福。


“旅人たちに、祝福を”


「…あ…!」

「そしてその銀の靴。オズが特別にお会いして下さるようだよ、珍しいこともあったものだ」


門番はカチャリとティーカップをソーサーに置き、再び見えない力で部屋の中央にあった箱を引き寄せた。