「ここは都へとつながる唯一の門で、ここまでなら誰でも入れます。都の周りはすべてオズが魔法で結界をはっているし、扉はひとつだけ。客人は必ずここを通るんです。
さて客人方、エメラルドの都で一番美味しいティーを入れて差し上げよう」


外見に似つかわしくない落ち着いた声音と物腰で、門番はパチンと指を鳴らした。
すぐさま奥の木の扉が開き、緑色のワゴンがひとりでに走り寄る。

ワゴンにはきっちり人数分のティーカップと、クッキーやケーキが溢れんばかりに乗っていた。

テーブルの傍でワゴンは制止し、ふわりとティーポットとカップセットが浮き上がり紅茶が宙で注がれ、各々の前に差し出された。

それを戸惑いながら受け取りながらも、その様子に思わず見入ってしまう。

魔法っぽい魔法。
まさにおとぎの国。

そんな印象が、わずかにうららの心を踊らせた。
だけどすぐに我に返り、門番に向き直る。


「あ、あの、わたし達…偉大なる魔法使い・オズに、会いたいんです…会いに来たんです」

「そうだね、エメラルドの都へ足を踏み入れようとする者はオズの恩恵を受けようとする者か、心無い者たちばかりだった。
だから残念だけど、オズはそうカンタンに、会ってはくれないよ。
オズは人と会うのを大変嫌い、その姿を見た者は殆どいない。ボクですらお会いしたことがないんだ」


門番はそう言いながら、こくりとティーカップを傾けた。