「うららちゃん、こっちだよ。ゆいについてきて」
軽快に駆けるゆいちゃんにつられるようにわたしの足取りも速まり、引かれるがままに真っ白な世界を駆けた。
ゆいちゃんははしゃぐように楽しそうで、不思議な気持ちだった。
「ゆいちゃんは…どうして、ここにいるの? どうしてわたしの名前を、知ってたの…?」
「ここは夢と夢の境界で、ゆいは、自分の夢からきたの。うららちゃんが真っ暗な夢に落ちてしまうのを、助けてあげて、って頼まれたの」
「頼まれた…?」
「うん、ホントは自分の夢から出るなんてすっごくこわかったけど、とっても不安だったけど…でもうららちゃんは、お兄ちゃんと繋がってるって、聞いたから」
「お兄ちゃん…? 聞いたって、だれに…?」
ゆいちゃんは歩みを止めず、振り返りながらわたしの質問に笑って答える。
「王子さま! ゆいに、いろんなことを教えてくれるの! ゆいは夢の中でしか生きられなくて、でも夢の中はずっとひとりぼっちで。だけど王子さまが時々来て、いろんなお話をしてくれるの! お兄ちゃんのことも、うららちゃんのこともよ」
どこか嬉しそうにゆいちゃんは笑い、それから「見えてきた!」と視線を前に戻した。
その視線を辿った先に一粒大の光が見え、その距離が少しずつ近づいてゆく。
「あそこが入り口。うららちゃんが、来たところ」