◇ ◆ ◇
ふわふわと、体が宙に浮いているようだった。
――ここはどこだろう…わたしは何をしていたんだっけ…?
記憶がぐるぐると、まとまりなく頭を旋廻する。
ふと視線を外したその先にまで、まるでわたしの頭の中の映像をそこに映し出したかのように、やさしい記憶は溢れてわたしを包み込んだ。
その中で懐かしい声が頭に響く。
『迷子になったら、困ったことがあったら、帰り道を見失ってしまったら──くつのかかとを3回、鳴らしてごらん』
そうこれは、小さい頃に教わったおまじない。
大好きなオズの、魔法のおまじない。
小さい頃は何かある度にそれを実行していた。
よく迷子になって、途方に暮れて泣いていたあの頃…おばあちゃんの言葉を思い出しながら、胸の内で何度も呼んでいた。
『想いを込めて、願いを込めて…そうすればきっと、道は拓く…願いは叶うから──』
――いつが、最後…? わたしがそれをしたのは、願ったのは──
風が強く吹いていた。
あの日呼んだのは、願ったのは、なんだった…?