「魔女…?」


北の魔女の言葉にうららは耳を疑い目を向ける。


――おばあちゃんが…魔女?


「うそ、そんなワケない…だっておばあちゃんは普通の…、どこにでもいるような、優しい、普通のおばちゃんよ…っ」

「信じるか信じないかは、あなた次第です。だけどヘレンの魔法の力では本来なら、一度にこの人数を呼び込む力はありませんでした。だけどある方が…この絵本に力を貸したのです」


「〝ある方〟…?」

「その方は、ヘレンの友人だったようです。その膨大な魔力を以って私達に命を吹き込み、この絵本は開かれました。…彼がどこにいるのか、それは私にも分かりません。オズのもとにいるのか…それともこの世界にはいないのか。だけどあなた達が望むなら、きっと力を貸してくれるでしょう」


北の魔女は伏せ目がちに視線を落とし、そっと胸元で両手を重ねた。
それはまるで、祈るように。


「彼、とは…?」


メガネの少年が北の魔女に尋ねた。

視線が、一集する。


「私達は彼を、〝夢みる王子〟と、呼んでいます」