『ゆいは病気のせいで、体力が極端にない。それは生まれつきで、段々衰えてる。ゆいはこの先も普通の人と同じように過ごすことは、難しいだろう』


確かにゆいは、病気のせいで学校には行っていない。
家に居る時もベッドで過ごすことの方が多い。

だけどそんなの、今更だ。
それはそういう病気だと、ゆいの病気に関して聞いた日から、理解しているつもりだった。


『起きていても、寝ていても体力は消耗する。だけどやっぱり、起きている時の方が圧倒的に体力の消費が激しくて…身体が少しずつ、ついていけなくなってるんだ』


父親の言葉の意図することがまったく汲み取れないのは、父親の説明が下手なのか、オレの頭がバカだからなのか。
ワケがわからずただ苛立ちで拳を握ることしできない。

全く反応を返さないオレに、父親は続けた。


『……ゆいが自分で目覚められないのは、眠っている間身体が仮死状態にとても近い状態だかららしい。だけど眠っている間なら、極端に体力を消費することも、気をつけていれば死んでしまうこともない』


唐突に出てきた死、という言葉に、漸くオレの頭がその先を感づいた時にはもう遅く。
父親がそれを口にした。


『…起きている時間が長いほど、ゆいの身体は寿命を消費する。ゆいがこれから先少しでも長く生きるには、眠っている時間を、長くしなければならない。……もうゆいを、起こさなくていいんだ…起こさないでくれ』