オレが7歳の時父親が再婚し、その1年後ゆいが生まれた。
死んだ母親の血を濃く継いだオレとは似ても似つかない、まっすぐな黒髪に黒い瞳をした、妹。
半分だけ血の繋がった8つ下の妹、ゆい。
あの日――ゆいが生まれた日。
生まれたばかりのゆいの小さなその手が、オレの指をしっかり握ったとき。
ケンカばかり、傷つけてばかりのオレの手を、ゆいがなにより価値あるものへと変えたんだ。
ひねくれて生きてきたオレのそれまでの世界をガラリと塗り替えるような、そんな存在だった。
だけどゆいは、生まれつき病気を患っていた。
ゆいは一度眠ると、自分の意思で目覚めることができない。
起こす者がいなければ永遠に夢に彷徨い死ぬまで目を覚まさない…そういう病気だった。
それを知った日から、ゆいを呼ぶのが…ゆいを起こすのが
オレの役目になった。