この世界は確かに、矛盾している気がする。
うららの為と言いながら、この世界はどこかうららを拒絶しているようにすら思える節がある。
レオはなんとなくそう感じていた。
それはあくまで自分の中の、根拠の無い勘に過ぎないけれど。
「…オレは」
大事だという、繋がりを持っていたはずなのに。
力を欲するが故? 願いが強すぎるから?
守る者と奪う者が居る世界で、うららはいつも結局泣いてばかりだ。
だけどそれは。
現実だって、おんなじことなんだ。
――オレは絆だとか繋がりだとか目に見えない甘っちょろいものなんて信じない。オレは今まで自分の通してきたやり方を…自分の目で見て感じたものしか、信じない。
だから。
「オレは、お前を信じるからな。お前がうららを想う気持ちを、信じる」
『…レオ…』
──オレは知ってる。
谷底に落ちていくうららを見て、最初に飛び出したのはレオじゃなかった。
真っ先に谷底に飛び込んだのは、東の邪悪な魔女を前にレオの隣りであんなに震えていた…大きな図体であんな怯え、気弱で臆病で弱虫だった、ライオンだった。
――それだけは、確かなもののはずだ。
「うららを探す。こんな胸クソ悪りぃとこ、さっさと出るぞ…!」
埃を払いながら立ち上がり、拳を握る。
それにつられるようにライオンも腰を上げたのと同時に、目の前の景色がぐにゃりと歪み出した。