「──うらら。随分彼らに、そしてこの世界に馴染んでいるようだけれど、そんなに信用して良いのかしら?

 夢見る王子もそう。彼は本当に、あなたの味方? 

 ねぇ、思い出して。ここの住人達がなぜ時折あなたを〝ドロシー〟と呼ぶのか…あなたもそろそろおかしいと思わない? いくらヘレンが作ったとはいえ、ここは〝オズの魔法使い〟の世界。

 だけどここには決定的なモノが、欠けている。ホントは気づいてるんでしょう?
 この世界には〝ドロシー〟がいない。一番大事な存在が、欠けているのよ。だからこそ、夢見る王子は住人たちに…ヘレンの願いに手を貸した。

 うらら、ここはあなたにとてもやさしい世界でしょう? 当然よ。だってあなたの為に用意された世界なんだもの。

 夢見る王子はあなたを、この世界の〝ドロシー〟にしたいのよ…!

 そうしてヘレンの絵本は完成する」