赤い瞳に真っ直ぐ見据えられ、うららは逸らすこともできなかった。


──銀の靴…? おばあちゃんがわたしに、託した…?


知らない。
わからない。
だけど──

頭の中におばあちゃんの記憶が駆け巡り、金色の光の中でぼやけたふたつの影が揺らぐ。

視界が霞む。
頭がぐらぐらする。
だけど、あれは──


「──うらら!」


叫んだのは、すべてを掻き消したのは、ソラの声だった。

身動きできずにいたうららの手を引いて、ソラが自分の背にうららを庇う。
うららの視界から東の魔女の姿は消え、ソラの大きな背中しか見えなくなった。

捕まれた腕の強さに、うららは呼吸を取り戻す。
急激に現実に連れ戻されたかのように、一気に汗が噴出した。

力が上手く入らない。
体が震える。

逸らせなかった。
東の魔女の、あの赤い目から。

何かがうららの中に入り込んで、一切の自由を奪われたかのように動けなかった。
呼吸が、心臓の音が、体の奥でうるさく騒ぐ。
体中で何かを拒絶するように。


「…なぁに、アンタ。ジャマしないでくれる?」

「うららに手を出すことは、僕が許さない…!」